第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
つか、誰が“残念イケメン”だ!
ダジャレ好きは認めるが、“残メン”は聞きづてならねぇ!!
新入生にそんな変な言い方で教えんなよ!!
「おい、小金井!あんましつこくすんなよ!」
「んぇ?伊月?」
直前の出来事に影響されて、想定より厳しめに響いてしまった俺の声は、今度こそ小金井に届いた。
悪びれも何もないその顔に、言ってやりたいことは沢山あるけれど、いまはもっと大事なことがある。
「その子、明らか困ってんだろ。」
入学早々、気まぐれ過ぎる小金井の餌食になった、新入生の方が心配だ。
きっと俺の後ろで、水戸部も頷いて静かに賛同していることだろう。
餌食…じゃなくて、女の子の方に視線を移すと…
急に聞こえてきた、見知らぬ声に驚いたのかもしれない。
声の元を探そうとしているのか、キョロキョロと周囲を見回している。
その様子を視界に収めつつ、人混みを掻き分けながら2人のもとに歩み寄り、小金井の前にいる女の子の背中に声をかけた。
「ねぇ君?うちの部員がすまないね。
気にしなくていいから。」
俺の声に応えるように。
それまで背中しか見せていなかった女の子が、初めて俺の方に顔を見せた。
?「は、はい…」
そこから先は。
ほんの一瞬の出来事だったけど。
綺麗なものを見逃すほど、俺の目は節穴じゃない。