第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
近づくにつれて分かってきたことは、小金井が何をしているかだけじゃない。
何を話しているのかも分かってきた。
「じゃあさじゃあさ!!
バスケ!なんて興味ない?」
あいつ、誰と話してんだ?
オレの視界が捕らえた、小金井の前にいる…女の子?
…は、こちらに背中を向けてて顔が見えない。
なんとなくだけど、状況からして新入生だということだけは分かった。
?「ば…バスケ?」
「そうそう!
いまマネージャー募集しててさ!
まだ決まってないなら、どうかな?!」
?「あ、うーん…
どうです…かね?」
うわ…相手の女の子、明らか困ってんじゃんか。
表情は見えなくても、声の調子から嫌がってるのが丸わかりだ。
初めはそれこそ、小金井の中学時代の後輩の可能性も考えたし、そうであって欲しいと思った。
色んな意味で…
けれど、後ろにいる水戸部の様子から察するに、その可能性はないみたいだ。
小金井と同中だったこの男は、顔見知りを見て微笑むでもなく。
後輩を見て懐かしむでもなく。
新入生とそれに詰め寄る親友の姿を見て、俺以上の困惑顔を浮かべていた。
んじゃ、完全に初対面であると…
こういう風に、面識のない相手に対しても我を通すところは、小金井のいいところであり。
悪いところであり…
けど、今回は悪い方に転がりそうだ。
そうなる前に、止めておかないと。
「ったく、しょうがねぇやつだな…
おーい、小が」
「いやいや、めっちゃ楽しいんだから!!
メンバーも面白いやつばっかだし。
えーとね、
毒舌眼鏡と、ダジャレ好き残念イケメン、
男勝り女監督に、
ダンマリと細目ハッピー野郎。
それとね〜」
お前が指折り数えてるそれ、俺らのことかよ?!!
それがお前の精一杯のメンバー紹介か?!
バスケ部誤解されるわ!!