第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
「さすが。どの部活も気合い入ってんな〜」
気になってるわけじゃないけれど、他の部の勧誘は見ようとしなくても目に入ってくる。
だから、目に見える情報が多すぎる。
この情報量で。
かつこの人混みの中、たった一人を見つけ出すとなったら。
苦戦するのは当然だ。
俺じゃなければ。
「どれどれ〜
我らがムードメーカーはどこかな〜」
そう口にすることで、自分に軽〜く蹴りを入れる。
俺にはちょっとした特技がある。
蹴りを入れるのと同時に発動させた。
これが当たり前だったけど、それが割と凄いらしい。
確かに役立つことも多いから、うまく有効活用している。
日常生活。学校生活。
そして試合…
だから、こういう場面において。
俺は他の人より数段上手だ。
だから早く小金井を探して…
「あ、いた。」
広げた俺の視界に、チームメイトのシルエットがあっさり映り込んだ。
思ったより早かったな。
結局、小金井はここまで何をしに来たんだ?
正門へ背を向けて、道のど真ん中に立つチームメイトの目的は不明のまま。
俺は水戸部を引き連れて、小金井のもとへと確実に足を進める。
近づくにつれて、だんだん分かってきた。
小金井が何をしているのか。
近づくまで気づけなかったのは、単に俺が上から見ていたからだろう。
主旨を見失っても、大元は見失ってなかったらしい。
真面目に勧誘に励んでいるのなら、説教ポイントは多少減ることになる。
けど重要なのは別のところにある。
目的も何も告げずに、俺ら2人を置き去りに走り出したことだ。
そこで説教ポイントガッツリ稼いでるんだよ、悲しいことに。
小金井のことだから、どうせ浅い理由なんだろうと予想はつくけれど。
小金井のいるところに、あいつが走り出した目的がある。
その目的というのも、すぐに判明しそうだ。
小金井の前にいる、俺の視界に映り込んだもう一つのシルエットは…
誰だ?