第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●伊月 俊● 〜校庭〜
「伊月!オレちょっと行ってくるわ!!」
「は?おい小金井!どこ行くんだよ!?」
俺の問いに答えることなく、小金井は正門の方に走って行ってしまった。
小金井の背中を追って送った視線の先は、なぜかさっきよりも勧誘の声が大きくなっていた気がするけれど。
それはあまり気にすることでもないのかも知れない。
「はぁ〜、ったく…」
ちょっと前まで鶯一羽相手に「鳩が鳩が!」って騒いでいたと思ったら。
今度はなんだって言うんだ。
んで、そのあと多分ちょっとサボってたしな?
いつものことだけど、勝手なことしやがって…
しょうがない、追いかけるか。
「おーい水戸部!
コガのところ行くぞー!」
俺の声に応えるように、水戸部が静かに頷いたことを確認した。
いつも思うけど、小金井と違って水戸部は衝動的に行動したりしないから、安心感が半端じゃない。
小金井と比べるところから、間違えてるのかも知れないけれど…
ざっくり“小金井を追いかける”と言っても、この状況じゃ追いかけるだけでも、決して楽じゃあない。
水戸部を連れて、同級生と新入生の間を縫って正門の方へと脚を進める。
「コガ相手にじっとしてろってのも
無理な話かも知れないけどよ。
だからって勝手に行動されちゃ困るよな。」
「………」
「なんか目的があるんだろうけどよ、
こうやって探す時間が勿体無いんだよな?
本来なら新入生相手にしてるはずなのに…」
「………」
「まぁ、俺のナイスなダジャレ1つで、
勧誘はバッチリだろうから。
そこまで心配する必要はないのかもな!!」
「………」
「な?!水戸部!!」
「………」
声は返ってこない、ということは分かってる。
分かった上で、後ろを歩く水戸部に話しかける。
顔を見れば、いくらか水戸部の考えてることは分かるけど。
いま後ろに振り返るわけにはいかない。
ちゃんと前を見ていないと、ただでさえウロチョロする小金井を、人混みから見つけ出すことが出来ないと思うから。
それにさっきの会話は一から十まで、水戸部は賛同一択だろうから。
何言ってるか分からなくても大丈夫だ!