• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●小金井 慎二● 〜校庭〜


知らない顔は半数。


知ってる顔も同じく半数。


ここにいる全員が、そうってわけじゃないことは分かってる。
だけど、上級生のオレからしたら、同輩と後輩の区別は一目瞭然だ。


だから、半数の知らない顔に範囲を絞って、ロックオンを始めたんだ。
そこんとこは抜かりない。


そんな風に造った視界の一角に、どこか違和感を感じた。


普通なら、絶対に見ないようなその光景に。
オレは素直に反応する。
この時すでに、鳥じゃないことは明白だった。


あれは人だ。


範囲を狭めた視界の中に、茂みを越えようとしている人影が映り込んだ。
次に分かったことは、その人影が女子の制服を着ているということ。


横から見た女子制服の姿は、桜の木の間から顔を出し、片足で舗装されたコンクリートの地面を踏んでいる。
もう片方の足は、緑の中に隠れてオレからは見えない。


一つの体で、太陽の光と木陰の両方を受けてるその子は…


顔は見えないけど在学生じゃない。
新入生なのはすぐに分かった。


検索範囲を“新入生”、“女子”に絞った、オレの超高性能追尾システムが反応したからってだけじゃない。


単に、在学生なら…


母校の校庭の茂みの中から“こんにちは”するわけがないと思ったからだ。


気がつかなかったけど。
オレはこの時既に、別の意味で目を奪われてしまっていた。
数十秒前に、2度もオレを襲った鳥の存在は既に忘れて。


大切にしていたはずの、ロマンスもトキメキも関与しない。
たった一つの、“興味”という好奇心に導かれるように。


/ 417ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp