第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●小金井 慎二● 〜校庭〜
その動きは迷いなく。
オレに向かって飛んできた、その軌跡を引き返すような経路だった。
フライトは往復切符だったんですかぁ〜?
オレのことを振り回すだけ振り回して。
反発の一つもさせてくれなかった“鶯”に。
なんだか、体力ばっか取られた気になって…
在学生と新入生で溢れる、人の道の上を…
空の道を往復しただけなんだとしたら。
だとしたら、オレが“鶯”にビビった意味って…
「あんなにオーバーに反応してやった意味が
なくなるじゃ」
元いた場所に帰って行った鳥に対して、「なくなるじゃねぇーか」と皮肉を言い切るより前に。
オレの意識は別のものに掻っ攫われた。
「ん?」
飛び去った鳥の後を追って、視線を向けた木々の間を見つめた時。
オレの超高性能追尾システムが、再び反応した。
唐突にだから、正確かどうかは分からない。
それでも、横目で見るよりはずっと正確だろう。
両目で見ることで機能を上げたオレの追尾システムは、反応を示し続けた。
男かも、女かも分からない、ひとつの影に。
「なんだ?あいつ…」