第4章 この道、桜吹雪につき。注意。
●小金井 慎二● 〜校庭〜
いや…横目だったから、ほんとは良く見えなかった。
“そんな感じがした”ってだけだ。
そんな風に、別の種族と“目が合ったような感覚”になって、気づいた。
あの鳥、スゲェー大人しいけどさ。
野生の鳥って、あそこまで人間に近づけるもんなのかな?
オレの頭の上スレスレで飛んでいったけど。
…そうそう、こんな感じで…って
「むぴょ?!!」
まただ。
またオレの顔に、鳥の形をした黒い影が落ちた。
さっきもこんなことがあった。
顔の近くで風が巻き上がり、オレの頬を掠めるこの感じ。
唐突に訪れ、そして、オレの関与を許すことなく去って行った。
間違いない。“鶯”だ。
“鶯”がオレに向かって飛んできたんだ。
今度は、桜の枝から飛び立つその瞬間を見ていたから、言い逃れはさせない。
他の生き物のせいにもさせない。
冤罪の相手が、たとえオレの天敵だとしても…鳩のせいには絶対させない。
オレは、防御に入ることを拒み。
その代わり、桜の木とオレの真上を結んだ、その直線の延長線上に視界を送った。
たとえ翼を持っているとしても、オレの反射神経が追いつけないほど、早くは飛べないだろ。
「見逃してたまるか!!」と思いながら、振り返った。
半ば意固地になっていたオレは、その後ろ姿を強引に捕らえた。
そして気づいたんだ。
2度もオレの不意をついた“鶯”が飛び去った、その方向は…
「…んだよ…結局戻るのかよ」
不意打ち1度目…
鳩のフリをして、オレに向かって飛び出してきた始まりの場所…
木陰で満ちた、桜の木の間だったんだ。