第13章 英雄ぶるのも大概に

●リコ side●　〜体育館〜


これが、部活が始まる前の出来事なら。つい先程終えたばかりのミニゲームより先の事ならば。黒子の言葉は、火神になんの影響も与えなかっただろう。


しかし、試合を通して黒子がただ口だけのプレイヤーではないことを知った火神は、弱かろうとテクニックはある黒子の事をいくらかは認め始めていた。


そんな黒子までリコに加担し始めたのを知って、火神は呆気に取られた。
自分が同い年の女相手に、しかもバスケを断念した相手に負ける。そう信じて疑わないと言いたげな黒子の眼差しを受け、火神は自分のバスケを否定されたような気がした。


「ん、んなわけあるか！！」


リコや黒子からの非難が受け入れ難かった火神は、天の手を離すどころかむしろその手により力を込めた。


「とにかく！しのごの言う暇があんなら
　バスケで話しつけろ、ってわけで！！」


その時だった。火神の耳に、ボソボソっと呟く声が聞こえたのは。


「あ？」


その声に釣られて、火神は黒子に向けてた視線を元に戻した。少し視線を下げると…


そこには、再び鬼の形相でこちらを睨む天の顔があった。


『冗談じゃねぇ！誰がお前なんかと！！』


天は怒鳴るようにそう吐き捨てると、腕に力を込めて火神の手を振り払った。