第13章 英雄ぶるのも大概に
●リコ side● 〜体育館〜
天の手を逃してしまったが、それだけで諦める火神じゃなかった。
「だから!口ばっかで楯突いてねぇで
とにかくやってみりゃ良いじゃねぇか!!」
『やらねぇーったらやらねぇーんだよ!!
お前みたいな礼儀知らずに、
私の決意を馬鹿にされてたまるか!!』
「んだと!」
『何も知らないくせに…』
言い返してやりたいことは山ほどあった。火神からぶつけられた暴言の全てに一つずつ言い返して、今の状況に陥った正当な理由がある事を示したかった。
しかし、それを伝えることはおろか、自己弁護すら出来ないことに憤りを感じた。結果天の怒りの矛先は、火神に向かう以外なかった。
『私がバスケにかけた思いを
愚弄するんじゃねぇーよ!!』
そう言うと天は、火神やバスケ部に背を向けて、再び体育館から去ろうと歩き始めた。
「おい!テメェ逃げんのか!!」
『どうとでも言いやがれ!
こんなところいられるか…!!』
火神が呼び止めるのを聞くわけもなく、天は体育館の出入口を潜った。
重いはずの体育館の扉は、バタンッ!!という大きい音と共に、天の手によっていとも簡単に締め切られてしまった。