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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第13章 英雄ぶるのも大概に


●天 side● 〜体育館〜


全国1位を決める戦いは、それ以前に行われた幾百ものどの試合よりも、熱い試合になることは想像に容易い。同年代の選手たちが闘志を燃やし、全国1位の座をもぎ取ろうとコート上で競い合うのだ。


しかし、その試合に“藤堂 天”という選手の姿はなかったのだと言う。
ただ優勝できなかっただけならまだしも、天はコート上で戦うことも出来ず、自分のチームが負けるのをただ見ているしかなかったのだ。


「そう…だったんだ。てっきりオレは」


「優勝したんだと思った」。そう口をつきそうになったが、小金井は空気を読んで最後まで口にはしなかった。たとえ事実でも、それを口にするのが憚られる雰囲気だということは、その場にいる誰しもが感じていた。
天が語ったのは、過去の出来事のほんの一部だ。しかし、バスケ部全員を唖然とさせるにはインパクトは十分だった。


天はこの手の会話なら何回もしてきてるし、こんな気まずい雰囲気に肝を冷やした回数も計り知れない。もう説明するのも疲れてしまった。


そして、天が今から語ろうとしている話はもっと驚かれてきた。ここにいる人たちも、同じだろうか?


『1年目はともかく、去年の全国大会…
 私のせいで優勝できなかったも同然なんです』


そう言い放った時、自分の周りを囲っている全員の、小さく息を飲む音が重なったのが聞こえた。そんな、バスケ部員たちの動揺を、確かに肌で感じてしまった。


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