第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
それは、天の“呼び名”の話になるより前。自らを「強豪校ではなく無名校出身」と謙遜した天が語った思い。
ただムキになっていただけだったが、「全国に強豪しか行けないのはいい気がしない」と口をついた天の言葉は、リコの耳には「チャンスは誰にでも与えられている」と言っているように聞こえていた。
リコを含め、誠凛バスケ部からしてみれば、天の存在は言わば“奇跡”だ。無名校出身の全国経験者。不可能と思われた夢が実現可能であることを、天の経歴が証明している。
「仮に…仮によ?」
過去に二度、無名校を全国の舞台まで引っ張り上げることが出来た天ならば。設立したばかりの誠凛を、同じように全国に導くことも。そうでないにしろ、その夢を支持することは容易なのではないだろうか。
リコがそんな期待を寄せるのに、天の言葉は“つい口を出た”程度でも十分過ぎた。
「今の藤堂さんに、バスケへの思い入れが
まだ残っているのだとしたら…」
だからリコは、今だけ普段の現実的な考え方を捨てた。神頼みに近いがそれでも良いと自分に言い聞かせて、夢みがちに天に尋ねた。
リコはただ、天に肯定して欲しい一心だったのだ。
「もう一度私たちと、
バスケで頂点(てっぺん)目指してみない?」
誠凛は全国に行ける、と。