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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第13章 英雄ぶるのも大概に


●天 side● 〜体育館〜


天が呼び名を愛せなかった理由は多々あれど、言葉自体ももちろんその一つだった。“土の竜”と書けば見栄えこそ良いが、読み上げてみればただの“もぐら”である。


現に、視線を上げた先にいるバスケ部員全員が唖然としている。そんな表情を向けられると分かっていたから、話したくなかったんだ。
元女子バスケ最強と謳われた選手が、“土竜”と呼ばれていたのではあまりにも締まりがない。天が心配したように、笑っている余裕など部員たちには全くなかった。


『あ〜なんていうんスかね?』


その空気に居た堪れず、天は自ら口を開いた。


『ほら、アレですよ。
 “皮肉”?…だと思います』


過去を忘れさせない呪縛のように、その言葉は今もなお天に纏わりついている。にも関わらず天は、嫉ましいそれを“皮肉”と言い捨てた。あたかも、自分は全く気にしていないとでも言い聞かせるように。


『まぁ…だからって、
 どういう事でもないんスけど…』


そう言って投げやりに話し終える様はまるで他人事のようで、側から見てあまりにも自信なさげだった。しかし、天の言葉を聞いたリコには微々たる期待が生まれていた。


「…えっと、じゃあ話を戻しましょ?」


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