第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
『すみませんけど、“強豪”っていうのは
撤回していただけませんか?』
「え」
『強豪じゃないっスよ。ウチの中学』
他人から見ても明らかに落ち着きのある性格で、事実普段から感情の起伏があまり無い天だったが。“撤回”と称して口を開いたこの時だけは、強い意志があるようにリコの目には映った。
『全国出場した経験がある、ってだけの
ただの“無名校”です。
“弱小校”と評すのも
私は恐れ多いくらいなんですから』
リコ含め、二年生たちや黒子が知る余地も無かったが、天の中学が全国出場を成し遂げたのは、設立以来天が在学中の二度のみだった。本人の言う通り、長らく“無名校”だったのだ。だから天が卒業した今、今後もその歴史が繰り返されるかどうかは天にも分からない。
『だからと言って
全国には強豪しか行けない、っていうのは…
あんまいい気しないんで』
本人たち以外の誰もが夢にも思ってなかった所業を、天は自分たちの世代で叶えた。数多の出場校の中で、強豪校のみが猛威を振るうことを許されていた全国に、他の誰のためでもなく自分たちのために闘い続けていた過去を持つ天は、リコに言葉を撤回させるには十分な権利を持っていた。
「あ…ごめんなさい…」
『あと、そちらの先輩も』
リコの謝罪を軽く受け入れると、今度はそれまで自分の代わりに説明をしてくれていた伊月に矛先を変えるかのように向き直った。
『その名前で
呼ばないでもらっていいですか?』
「え」