第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
「…え?」
『え?』
「え??」
天は多くを語らず、ただ一言。「校舎がキレイだから」とリコに告げた。
「え…それだけ!?」
『はい、それだけです』
何度でも言うが、これは事実だ。欠片ほどの嘘もない。
リコや上級生たちは納得出来ないだろうが、これも紛れもない、天の持つ“理由”だった。
この二つ目の“理由”は、最も重要な一つ目の“理由”の隠れ蓑となる。「キレイな学習環境を選んだ」という事実が、「プレイヤーにならない道を選んだ」という事実を多少なり霞ませることが出来る。
ところが、それだけでリコが納得できるはずもなかった。
「推薦は?!
推薦だって間違いなくあったはずでしょ?」
『あったけど蹴りました』
「「 なんで?!! 」」
『いや“なんで”って…』
想定の斜め上を行く天の返答に、不服とでも言うかのように部員たちは揃って疑問をぶつける。流石に聞き分けのない部員たちに、天は少し呆れてしまった。
『行きたくなかったからですよ。
てかそんな驚きます??』
天のあっけらかんとした答えに、二年生たちは疑問符が収まらない。「推薦を蹴る」というワードを、受け入れることが出来なかったのだ。
「だって…断る理由考える方が
難しいことでしょ」
『りゆう?』
リコに再び理由を問われたが、これは至って簡単な話だ。
『あぁ、理由もありますよ?一応ちゃんと』
事実、天は新校舎に魅入ったことにより、創立したばかりの誠凛を選んだ。それならば、推薦校を断る理由もいたって単純だ。
『校舎が古くって』