第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
「そんなスゲェー奴が、
何で誠凛(ここ)にいんだ?」
火神が抱く疑問は、至極真っ当なものだった。現にここに居る誰しもが、その理由を知りたがった。だからこそ天は、今ここに居る。
方や天は、その疑問をぶつけられることを何よりも嫌った。それは天がプレイヤーでいられなくなったことと、綿密に結びついているからだ。
「誠凛に来た本当の理由」。それを天は語ることが出来ないし、語るつもりもない。
「私たちも、実際そこが気になるのよ」
ところが、本人の意思とは裏腹に、好奇心で理由を知りたがるバスケ部は直球で問いかける。あたかも、プレイヤーでいる道を選ばなかったのが、間違いであるとでも言うかのように。
「藤堂さん。
プレイヤーになれないと知りながら、
誠凛に来た理由はなんなの?」
リコは天にそう問いただした。
しかし何度尋ねられようとも、本当の理由を打ち明ける気は天にはなかった。だが、それなりに答えなければ、バスケ部が納得しないことも分かっていた。
出来合いの嘘は簡単にバレる可能性があるし、真実を語ろうとしていないと知られたら、余計興味を掻き立ててしまう心配もある。
普通であれば、こうなった時点で詰みである。
しかし、天には一つ切り札があった。
『理由、ですか』
天が誠凛を選んだ理由は、実は一つではない。
二つあるのだ。
これは嘘はなく、完全なる事実。だからこそ天は、“本当の理由”として堂々と告げることが出来る。
一つは、プレイヤーになる必要がなかったからだ。女バスがない環境がそれを可能にする。
そしてもう一つは…
『校舎がキレイだからです』