• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第13章 英雄ぶるのも大概に


●天 side● 〜体育館〜


「そんなスゲェー奴が、
 何で誠凛(ここ)にいんだ?」


火神が抱く疑問は、至極真っ当なものだった。現にここに居る誰しもが、その理由を知りたがった。だからこそ天は、今ここに居る。


方や天は、その疑問をぶつけられることを何よりも嫌った。それは天がプレイヤーでいられなくなったことと、綿密に結びついているからだ。
「誠凛に来た本当の理由」。それを天は語ることが出来ないし、語るつもりもない。


「私たちも、実際そこが気になるのよ」


ところが、本人の意思とは裏腹に、好奇心で理由を知りたがるバスケ部は直球で問いかける。あたかも、プレイヤーでいる道を選ばなかったのが、間違いであるとでも言うかのように。


「藤堂さん。
 プレイヤーになれないと知りながら、
 誠凛に来た理由はなんなの?」


リコは天にそう問いただした。


しかし何度尋ねられようとも、本当の理由を打ち明ける気は天にはなかった。だが、それなりに答えなければ、バスケ部が納得しないことも分かっていた。
出来合いの嘘は簡単にバレる可能性があるし、真実を語ろうとしていないと知られたら、余計興味を掻き立ててしまう心配もある。
普通であれば、こうなった時点で詰みである。


しかし、天には一つ切り札があった。


『理由、ですか』


天が誠凛を選んだ理由は、実は一つではない。
二つあるのだ。


これは嘘はなく、完全なる事実。だからこそ天は、“本当の理由”として堂々と告げることが出来る。
一つは、プレイヤーになる必要がなかったからだ。女バスがない環境がそれを可能にする。


そしてもう一つは…


『校舎がキレイだからです』


/ 417ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp