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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第13章 英雄ぶるのも大概に


●天 side● 〜体育館〜


「“大体の試合”…ってことは
 全国も例外じゃナイ、ってことなのかな?」

『はい、スタメンでした』


土田が口にした“全国”という言葉。それは、“全国中学校バスケットボール大会”。通称“全中”のことを意味していることは、その場にいる全員の共通認識だった。


「藤堂さん…全国出てんの?!!」


土田の問いかけを皮切りに、全国経験者と知らなかった一年たちが驚きで声を上げる。


「全中経験者で…その上スタメンとか」

「それ、レベル違い過ぎるって…」


この時点で、一年たちの天を見る目が変わったことは明白だった。先ほど自分たちの手で気絶にまで追い込んでしまった同い年の女子生徒が、急に体現し難いほどの強者に見えてしまっていた。


男女の差以前に、自分たちと天の間に大きな溝があるように思えた。飛び越えようと思っても、直前で尻込みしてしまう程、深く大きな溝だ。
その原因は、天の言動が関係している。実績があるにも関わらず、その経歴を鼻に掛ける様子のない天の姿が、一年たちの目から見れば異様そのものだった。
他者の目に映る“全国経験者の風格”というものが、無意識のうちに身についていた事に天は気づいていない。


全国経験者である天への興味から、どんなプレイヤーだったのかを突き詰める質問をするそんな中。天に対して個人的な質問をする者もいた。
“元プレイヤー”に対する質問が区切りをつけると、小金井が待ってましたと言わんばかりに「はい!はーい!!」と手を挙げた。


「カレシはいますか?!!」

『いません…てか何の話?』


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