第13章 英雄ぶるのも大概に
●天 side● 〜体育館〜
急なことで、言葉を用意していなかった天の口から「えーと」と頼りない声が溢れた。多くの視線が注がれているためか、口を開かない時間だけ焦りが増すように感じた。
『なにから言えばいいか…』
難しい事を考えるかのように悩む天の姿に、見かねたリコが明るく指南した。
「いいのよ!フツーに自己紹介してくれれば!」
その言葉に天は、“自己紹介”という選択肢を忘れていたことに気付かされた。想定してたより簡単だと思った天は、「それじゃあ、軽く…」と言って語り始めた。
『改めて、藤堂 天といいます。
一応、中学まではバスケをしていました。
F(フォワード)として。…と』
天はそこまで言うと、次は何を言おうか悩んで「ん〜〜〜?」と顔に困惑を浮かべ、宙を仰ぐ。しばらく迷った末、他に何も言うことがないことに気づき、諦めて吐き捨てた。
『以上です』
「「 短っ?! 」」
冷静な天の態度とは対照的に、バスケ部の面々は一様に驚愕で声を上げる。さらに、本人が自ら話そうとしないため、今度は部員から質問を投げ掛け始める。
「レギュラーだった、ってのは本当なのか?」
『えぇ、まぁ一応』
唯一救いだったのは、聞かれた事に対して天がちゃんと答える意思があったことだ。何を話せばいいか迷っていた割に、日向の質問への返答は思いの外早かった。
「即戦力だった、ってのは?」
『そんな風に言われたことはないっスけど、
世間一般にはそう言うんだと思います。
大抵の試合にはフルで出てたし』
天の返答に対して、日向は思わず「マジかよ…」と溢した。
それに続いて、今度は土田が口を開いた。