第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜体育館〜
緊迫が高まり、両チームとも焦りが見え始める。そんな一抹の不安が生んだ結果だろうか?一年のスティールが成功し、攻撃はニ年から一年へ切り替わる。
奪ったボールは床でバウンドし、黄色のビブスを付けたプレイヤーの手に収まった。
「よっしゃ!」と思ったのも束の間。プレイヤーの姿を見た天は、打って変わって愕然とした。点を取れば勝ち確の一世一代のこのタイミングで、ボールを保持したのがよりによって…黒子だったのだ。
「しまった!」『やっべ…』
それを見た二年が焦り出す中、黒子は一気にゴールへと突き進んでいく。ノーマーク状態のため、高度なドリブルテクニックはなくとも楽にゴール下まで辿りつくことが出来た。
「うぉお!!」
「行けぇ!黒子!!」
天の心配をよそに一年は勝利の確信。ニ年はギリギリまで走る。それを尻目に、黒子は相手ゴールへレイアップ…したのだが。
ボールはリングを通る代わりに、ガコンッ!という音とともに弾き返されてしまった。
「「「 あ… 」」」
それを見た一年たちは、少し前の天同様愕然とする。ノーマーク状態でレイアップを外すことはバスケ界では極刑レベルだ。場所が場所なら天の口からも「何やってんだ!!」というヤジが飛ぶところだった。
黒子の力でここまで追い上げたのに、最後は黒子のシューティングミスで敗北するなんて皮肉なものだと、天は肩を落とした。一年が勝利する可能性が確かにあった分、この敗北がより悔しい。
終了のホイッスルはまだ鳴っていなかったが、万事休すなのには変わりない。そう諦めた時だった。目に飛び込んできたものを見て天は思わず息を呑んだ。
黒子の後ろから伸びる大きな影。それは弾き返されたボールをしっかりと受け止めた。
「だから弱えヤツはムカつくんだよ!!」
そして、これ以上ないってほどの正確なルートで、リングの中へとボールを力強く叩き込んだ。
「ちゃんと決めろ…タコ」
急なことで放心してしまったが、天はすぐに理解した。二年よりも一歩先に、ゴール下に火神が間に合ったのだ。
そして、リングを通ったボールが床に落ちて跳ね返った途端、試合終了のホイッスルが体育館に鳴り響いた。