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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第12章 ミニゲーム


●天 side● 〜体育館〜


黒子が本領を発揮してからと言うもの、一年の間で面白いほどにパスが通るようになった。黒子はディフェンスを掻い潜り、ボールを仲間から仲間へ繋ぐ。


普通ならボールが回らないような位置にいる仲間にも、黒子がいればそれは関係なくなる。つくづく、よくできたバスケスタイルだと感心してしまう。


「気がつくと…パスが通って決まってる…?!」

「一体どうなってんだ…?」


黒子は普通のバスケ選手ではない。黒子のバスケスタイルは、この試合で見せたような“パスの中継役”となることだ。パス回しが早いからではない。ボールの軌道を相手選手に気付かれないからだ。


通常、そんなことは不可能に等しい。しかし黒子はそれを可能に出来る。“圧倒的に存在感がない”からだ。そんな悲しい特性を、強みに変換するのは一筋縄ではいかなかった。しかしそれが、“中継役”という役割を持った途端、その特性は足枷どころか強みへと変わった。


“ミスディレクション”。
それが黒子の持つ、独自のバスケテクニックだ。ドリブルやシュートが並の選手より劣っていても、黒子がプレイヤーとして活躍出来た理由がここにある。
だからこそ黒子は、帝光中時代こう呼ばれていた。


“幻のシックスマン”と。


試合終了ギリギリまで、黒子のプレイによる一年の追い上げは続いた。更に、黒子のパスに気を取られたニ年は火神へのマークが手薄に。そして、


「うわぁ!信じられないねぇー!」

「1点差!!」


驚異の追い上げにより、16点あった差を1点にまで縮めることが出来た。しかしもう時間がない。
二年が攻撃する中、残り時間で追加点を得るためには攻守を切り替えなければならない。


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