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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第12章 ミニゲーム


●天 side● 〜体育館〜


『勝っ…た?』


口から自然と溢れていた。直前まで負けを覚悟してた人間の口からは、これほど頼りない音が出るのかと思ってしまう程だらしない声だった。


そんな天とは打って変わって、一年は思ってもみなかった勝利に大歓喜だった。試合が好転する前の最悪な雰囲気はどこへ行ったのか、そこには互いに讃え合い認め合う姿があった。


その一方、まさか負けるとは思っていなかっただろうが、喜ぶ姿があれば悲しむ姿もあるだろうと、天は二年の方へ視線を動かした。後輩に負けた悔しさを感じたが、どこか嬉しそうな様子も天は表情から汲み取った。


天は再び、一年の輪に目を向けた。その中心には黒子がいて、試合終了間際から見せていたテクニックに関して一年から賞賛の声を浴びている。黒子本人は、もうそんな場面を何度も経験しているのか、大きな感情の動きはない様に見えた。
それでも、その光景を見た天の口は自然とほころんでいた。


『確かに見たぜ、キミのバスケ』


黒子は試合の最中、天だけではなくバスケ部全員に自分の力を示して見せた。黒子の存在は可能性の塊だ。テクニック自体は本人のものだが、それがいずれこのチーム全体を支える力になり得ることは、見ていた全員が信じざるを得なかっただろう。


その輪の中に天が入ることは決してない。しかし黒子はこれから、このチームで上手くやっていけるであろうことを確信して、目の前の同級生たちを穏やかな気持ちで見守った。


中学時代の最後の戦い。全中のあの決勝から、時は一年も経過していない。その時から黒子はここに至るまで、様々な悩みと戦い、時に苦しんだのかもしれない。
それでも今、新たなチームと共にコートの上に立つ黒子の姿は、昨年天が試合会場で見た時の姿とは比べ物にならないほど生き生きとしていた。


天が心配せずとも、黒子は自分の力で這いあがろうとしている。それに気づかされた天は、過去と現在の全てをひっくるめて、最大の敬意を込めて口にした。


『やっぱ凄ぇーよ、黒子くん』


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