第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜体育館〜
これから、一年対二年の試合が始まろうとしている。
室外の暗さが、体育館が放つ光りをより一層輝かせている。そのライトの下、黄色のビブスを着けコートに立つ同級生たち。天はその様子を、少し離れた場所から見守っていた。
「覚えてるか?
入部説明の時言ってた去年の成績…
一年だけで決勝リーグまで行ってるって…」
「マジで?!」
「フツーじゃねぇぞ、それ…」
驚いた様に語る同級生たちの声で、天は今日の昼、図書室で目の当たりにしたものを思い出した。“男子バスケ部 新人戦 関東大会出場!!”の文字だ。
3人程ではなかったが、その事実に天も静かに驚いていた。新設校ならば地区予選でまともなプレイが出来ただけ、胸を張ってもいいくらいだ。
しかし、このチームは初年度でそれを遥かに越える成績を残した。
学校がバスケ部に力を入れているのか、はたまた優秀なプレイヤーが集まったのか。それを天が知る余地もないが、高校生活には持ち込んでこなかったはずの興味が、今は少しだけ掻き立てられたかに思えた。
しかし、天は別のことに気を取られ、芽生えかけたそれには見向きもしない。さっきから何か引っかかるのだ。しばらくコート内を注意深く見回していると、ある瞬間、その違和感の正体にようやく気がついた。