第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜体育館〜
天が振り返ると、眼鏡をかけた男子生徒が口を開いた。
「悪かったな。さっきの容疑者どもだ」
その言葉を合図にしたかのように、隣に立っていた男子生徒たちは、天に対して一斉に頭を下げた。
眼前に広がる異様な光景に、天は少し後退りする。状況を整理しようと試みるのも束の間、
「藤堂さん!ほんとにごめんなさい!」
「俺たち、こんなことになるとは思ってなくて!」
「顔に傷でもついたら、
オレほんとどう詫びればいいか…」
3人の男子生徒たちは、そう口々に捲し立てた。依然として、頭は下げたままだ。
その光景から、この謝罪の趣旨を掴んだ天はハッとした。「あ、さっきの流れ玉はコイツらが…」と。天は再び、自分に向かって頭を下げる男子生徒たちに目を向けた。
「俺からもキツく言っておいた。
簡単に許してもらえるとは思ってねーが。
ほんと、すまなかった」
そう言って眼鏡をかけた男子生徒は、「主将として申し訳ない」と頭を下げる。
こうして、“元凶(流れ玉)”を作り出した男子生徒たちと、自ら“主将”と名乗った男子バスケ部のキャプテンの、総勢4人が天に頭を下げる。
しかし本人たちの心中とは裏腹に、天の心は穏やかだった。天はただ、「こういう不幸が自分に降り注いだ」という事実だけを受け入れていた。そのため不思議と怒りは湧かず、キャプテンや他の3人を責める気は天にはなかった。
だから、
『いえ、全然…大丈夫っスから…』
天はそう言うと、遠慮がちに「なので頭あげてください」と続けた。