第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜バスケ部の更衣室〜
“更衣室”と言われたその部屋を一望し、自分がどこにいるのかを把握した天は、改めて女子生徒に向き直った。
『あ"ぁ…私いまどんな顔になってます?』
「赤い…主に鼻が」
『だから痛いんだ…』
天は腑に落ちた様にそう言いながら、自分の鼻に手を伸ばす。輪郭を確かめる様に鼻を撫でると、患部に触れてしまったらしく、あまりの痛みで顔が歪む。
それを見た女子生徒が「ダメよ下手に触っちゃ!!」と、天の手を握って静止した。触れた手の温かさが、冷え切った天の身体にじんわりと入り込んできた。
「これ、気休めにしか
ならないかもしれないけど」
そう言って女子生徒は、もう片方の手で天に何かを差し出した。それに釣られて女子生徒の手元を見ると、そこには一枚の絆創膏が握られていた。
確かに絆創膏でどうにかなる話ではないのだろうが、無いよりはマシだろうと思い、「あざっす…」と言ってそれを受け取った。
しかし更衣室に鏡はなく、また鏡なしに的確に貼れるほど天は器用じゃない。結果、受け取った絆創膏を一度返し、女子生徒に貼ってもらうことで事なきを得た。
しかし…
「頭は大丈夫そう?」
『え、なんでっスか?』
「倒れた時、強く打ったように見えたから…」
鼻だけではなく、頭まで打っていたという事実まで明らかになった。しかしそれが、一時的に記憶が抜け落ちてた天に事態を把握させた。
『なんか…だんだん思い出してきました』
「ほんとごめんなさい…」
『いえ、私が受け止められなかっただけなので』
なす術もないまま、ボールを顔面に受けてしまったことを完全に思い出した頃には、平謝りする女子生徒に気を遣う余裕まで戻っていた。
『むしろサーセン、マネージャーさんの
手を煩わせる気は無かったんスけど』
天のその言葉で、女子生徒は気まずそうに「あ…その…」と吃った。
「言い忘れてたんだけどね?」
『ん?』
「私…」