第12章 ミニゲーム
●天 side● 〜???〜
誰かの声で、天は瞼を上げる。視界はぼやけてはっきりと見えない。数回瞬きを繰り返すと、徐々に鮮明になってきた。
そして天は、誰かが自分の顔を覗き込んでる事に気づき始める。視界に映り込んだ人影は、心配そうに「大丈夫?」と天に呼びかけている。
その顔は記憶に新しい。黒子に会うために赴いた体育館で、天の後に入ってきた女子生徒だ。
それに気づいた瞬間、天の頭は疑問で溢れた。「なぜこの人は私を見下ろしているのだろう?」、「私はここで何をしてるのだろう?」。
自分の身に何が起こったのか分からなかった天は、目の前にいる人物に、
『私…なんで…』
とだけ、弱々しく尋ねた。
その不憫な姿を気の毒に感じた女子生徒は、伝えるのに少々戸惑いつつも、最後には、
「流れ弾が当たったのよ。運悪く顔に…」
と告げた。
自分の身に何が起こったのかを理解した天は「うわ…マジかよ最悪…」と溢し、悲痛に顔を歪めた。
「起きれそう?」
『えぇ…大丈夫です』
天は女子生徒の手を借りながら、ゆっくりと起き上がった。その時初めて、ベンチの上で寝ていた事に気づいた。硬い床の上で寝ているように、寝心地が悪い理由が分かった。身体がバキバキと痛むのも無理はない。
未だ意識が朦朧とする中、天は更に質問を続けた。
『ここは…?』
「バスケ部の更衣室よ」
女子生徒のその言葉で、天はゆっくりと周囲を見渡す。そこは確かに更衣室というに相応しく、たくさんのロッカーやバスケの備品ばかりだった。
初めて赴いた場所のはずなのに、ほんのり懐かしさを感じる理由が分かった気がした。