第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜体育館〜
ーちょっと前ー
「の割に鈍臭いな、お前」
いつも、ってわけじゃない。
今日がたまたま…
たまたまそういう日、ってだけだ。
今日はよく人とぶつかる。
同じ人にだったけど。
火神はきっと信じないだろう。
でも本当なんだ。
その証拠に、自分の感覚が物凄く研ぎ澄まされる瞬間だってあるんだ。
「危ない!!」
誰かの声で振り返った。
目の前には、懐かしのバスケットボール。
自分の方に、爆速で迫ってくる。
でも大丈夫、これくらいなら取れる。
なぜなら、「自分の感覚が物凄く研ぎ澄まされる瞬間」っていうのは…
こういう風に、バスケットボールと対峙したときなんだから。
そう思って腕を上げようとした…その時。
ドクンッ!という鼓動と共に、血液が逆流するような感覚を覚えた。
『ゔっ…!』
目の前が、一瞬歪む。
腕は上がらなかった。
受け止められるはずだったボールは、天に軌道を変えさせぬまま迷いなく近づいてきて。
そして…
『ぴぎゃ?!!』
天はボールを顔面に食らった。
それ以外に、受け止める術がなかった。