第11章 バスケットボールと花時雨
●no side● 〜体育館〜
天の手に残されていた、“爪切り”というメモ書き。
「あら、確かにこの子爪長いわ」
油性ペンの字に気を取られて気づかなかったが、リコは手に取った天の左手を見て、爪の白い部分が目立っていることに気づいた。
バスケ部員たちは一様に、体育館の床に寝そべるその姿を見下ろす。
突如として、天を襲ったバスケットボール…
避けるか止めるかしなければ、当たることは確実だった。
しかし、目の前にいるこの少女は、女は女でも元No. 1。
流れ弾なんて簡単に止められる。
誰もが、そう思って疑わなかった。
ところが実際は、流れ弾を受け止められず、さらにスポーツ選手にとってタブーの長爪。
体育館の床に伸びているその姿は、見るからに弱々しい。
その場にいる全員が、思わずにはいられなかった。
「この子…が」
「中学女子バスケの、元最強…」
信じ難いことではあるが…
「「 うそだろ… 」」