第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜体育館〜
黒子の言葉に、天が幻滅していた時だった。
「おぉカントク、やっと来たか」
バスケ部員の一人が、そう口にしたのが聞こえた。
天が“監督”という言葉にハッとさせられたその瞬間。
「ごめんごめーん!
急に降ってきたわね〜」
という声と共に、誰かが廊下から体育館の中へ入ってきた。
天の視線は、自然とそちらに引き寄せられる。
天の前に現れたその人影は、小柄な女子生徒だった。
茶色い短髪で、前髪をピンで止めたスタイリッシュな風貌だったが、髪と同じ色の瞳はクリクリとして可愛らしい。
天が女子生徒を見つめていると、女子生徒の方も、丸い二つの瞳を真っ直ぐに天へと向けていた。
体育館の入り口で鉢合わせた瞬間から、天の顔を驚きの眼差しで見つめていた。
理由は分からなかったが、穴が開きそうなほど自分を見つめる女子生徒に対して、天は「ども…」と小さく会釈する。
しかし、また幻滅することとなる。
よりによって、その女子生徒まで、
「ポテチちゃん!!」
天のことをそう呼んだのだ。