第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜体育館〜
「入り口塞いでんの分かんねぇーのか。
どけ、邪魔だ。」
そう言って火神は、またしても天を威圧した。
『あ、あぁ…』
いい気はしなかったが、天は勢いに負けて道を譲った。
それを見た火神は、天に見向きもせずに体育館へと入る。
この時天は、火神もバスケ部だという事実を目の当たりにし、その後ろ姿に軽く睨みを効かせた。
しかし本人はそんなこと気づきもせずに、体育館を我が物顔で闊歩している。
その時。
「藤堂さん」
『うぉお?!!』
天は唐突に真横から声をかけられ、驚いて声を上げる。
天を囲んでいたバスケ部員たちも、突如和現れたその人影に驚いていた。
天が声のした方へ振り返ると…
『な…なんだ黒子くんか…』
動きやすい服装に着替えた黒子が、天の横に立っていた。
天がほっとして胸を撫で下ろす一方、「来てくださったんですね」と黒子もまた安心したように微笑んでいた。
「嬉しいです」
黒子のその柔らかな笑顔に、“期待”が含まれていることに気づいた天は、慌てた様子で訂正した。
『いや…ほんと、見るだけだからな?!
見てくれって言われたから来ただけで!』
「はい、分かってます」
「こんなことは、今回だけのこと」。
条件付きであるということを念頭に置いてるのは、天だけではなく黒子も同じだった。
『ところでよ…』
天は黒子と距離を詰め、周りには聞こえない声量で黒子に語りかけた。
天に合わせて、黒子は「どうかしましたか?」と小声で聞き返した。
天は耳打ちするように、
『さっきから、やたら“ポテチ、ポテチ”
言われるんだけどよ…』
と、先ほどから気になってしかたなかったことを尋ねた。
そう聞かれた黒子も、何があったのか理解したように「あぁ〜」とでも言いたげな表情を見せた。
『これってもしかして…』
「藤堂さんのことですね」
『やっぱりか…』