第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜体育館〜
詰みの状態になったことに気づいたが、既に遅かった。
駆け寄ってきたその人物は、お構いなしに天に話しかける。
「ねぇ君、大丈夫?
ごめんね〜うちの後輩が気ぃ遣えなくて」
そう言いながら、尻餅をついた天に視線を合わせてきた。
瞬間、互いに目が合った。
『あ』
「んあ"!!」
その覗き込んできた顔に、天は見覚えがあった。
昨日の朝、部活動勧誘で天に声をかけてきた、バスケ部の部員に違いなかった。
気づいたのは、相手の方も同じだったらしく、驚いたように口をあんぐりとさせていた。
『あなた…確か』
「ポテチちゃん!!」
瞬間、廊下に響き渡った。
天の鼓膜を通って入ってきたその声は、「大きくてうるさい」と思わせるよりも先に、天に困惑を与えた。
“ポテチちゃん”…
天を取り巻く空間が、なんの脈略もない言葉で一気に満たされた。
そんな天に追い討ちをかけるかのように、そのバスケ部員は天の肩に手をかけ、真っ直ぐと見つめた上で続けた。
「ポテチちゃん…ほんとに来てくれた!
自分から!黒子の言った通り!!」
「いまがどんな状況なのか、考える暇は与えない」とでも言うような、追い討ちの数々。
目の前にいるこの人は、自分のことを「ポテチちゃん」と呼んだと言うことだけは理解できた。
それ以外、何も理解できなかった天は、最終的に困惑顔でこう口にするだけで精一杯だった。
『は??』