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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第11章 バスケットボールと花時雨


●天 side● 〜体育館〜


『やべっ…!』


「このままでは鉢合わせしてしまう!」と天は慌てた。
しかし、考える余裕はあまり与えてもらえなかった。
ほんの一瞬考えた末、“一旦身を隠す”という選択を取ることに決めた。


集団に見つかる前に、先ほど自分が入ってきた道を引き返そうとした…


その時だった。


急なことで前を見ていなかった天は、駆け出した瞬間、前方不注意で何かと衝突してしまった。


『わいたっ!!』


目の前に先ほどまではなかった壁が現れ、避けきれなかった天は正面から思いっきりぶつかり、顔を強打する。
その反動で体はバランスを崩し、天は尻餅をついてしまった。


廊下の固い床にお尻を打ったことで、ジーン…とした嫌な痛みが広がる。
「イッテェ〜…」と、天が悲痛に顔を歪めていると。


「おい、ぶつかっといて詫びもなしか?」


壁…と思っていたものが喋り出した。


その時になって、天はようやく気がついた。
自分がぶつかったのは、壁ではなく人だったことを。


『ごめんなさい!ちょっとよそ見を』


集団に気を取られ、入り口の方に注意を払っていなかった。
天は、自分の不注意でぶつかってしまったことを謝罪しようと顔を上げる。


ところが、顔を完全に上げた途端。
天は息を呑み、謝罪の言葉は途切れてしまった。
その時天は、驚きの表情で固まっていた。


天が見上げた先で待っていた人物…
その風貌に、天は見覚えがあった。
そしてそれは、相手も同じだったらしく、固まる天を見下ろしながら「お前…」と呟いていた。


尻餅をついたまま動けなくなっている天に、


「後ろのアホじゃねぇーか」


冷たくそう吐き捨てたのは、場所は違えど、つい昨日も同じ目で天を見下ろしていた人物…


火神 大我だった。


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