第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
雨が降り出した放課後。
教室で黒子が天にかけた言葉。
「ボクも着いて行っていいですか?」
雨の日に桜なんてわざわざ見るものでもないのに、それでも黒子は、天と共にここへ来た。
案の定、沛雨の陰に隠れた桜は人目を引かず、寂しげに咲いていた。
誰も見てない。
誰にも見られていない。
天と黒子を除いては。
そう、黒子は違った。
天にはそれが、黒子なりの気遣いだったのだと思えた。
感情を露わにしない少年の、紛れもない優しさだと。
降り頻る雨の中、盛りを終えようとしてる桜の木を。
天の隣で、黒子は共に見たのだった。
そして、黒子は未だに走り続けている。
バスケをするために。
天がなんとしてでも、切り離したかったバスケを。
そんな黒子に対して、天はこう問いただしていた。
「バスケ部、楽しんでやってけそ?」、と。
そして黒子は、黒子なりの答えで天に答えた。
* * *
「それからボクはさっき、
藤堂さんの質問に対して
「まだよく分からない」って答えましたが」
『あぁ〜そういえばそうだったな』
「少しだけ違います」
『え?』
「楽しむ…とはちょっと違うと思いますが、
面白い人を見つけたんです」
『“おもしろいひと”?
誰だ?バスケ部のやつか?』
「はい。
凄く、輝いてくれそうな人でした」
『は?』
「ボクは影です」
『かげ…』
「ボクの役割です」
* * *
天は黒子のその言葉で、事実上宣言されたのだった。
「まだ諦めていない」ということを。