第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
黒子は、あまり多くは語らなかった。
「でもボクは藤堂さんを待ってます」
最後まで無理強いはせず、そこから先の選択は天に委ねた。
しかし結局、天の出した答えは「このまま真っ直ぐ帰ろう」だった。
そうする以外に、最善の策は見つけられなかった。
そう決心した天は、立ち上がってその場を離れた。
黒子が向かった方とは、逆の方に歩き出して。
この選択に間違いはない。
黒子に頼まれたとて、わざわざバスケ部の元へ行く義理だってない。
そう自分へ言い聞かせるために、脚は決して止めなかった。
余所見はせずに、ただひたすらに前へ進み続けた。
ところが…
とある言葉が、天の歩みを止めた。
固く決意したはずの、天の後ろ髪を引いたのだ。
それは…
「ボクも着いて行っていいですか?」
黒子が教室で、天にかけた言葉だった。