第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
「ボクはさっき、藤堂さんの質問に対して
「まだよく分からない」って答えましたが」
黒子のその言葉で、天は先ほどの会話を思い出す。
* * *
『バスケ部、楽しんでやってけそ?』
「まだよく分かんないです。
練習が始まってみないと」
『…そりゃそうか』
* * *
空から降り注ぐ雨粒の間から桜を見ていた、あの時の会話だ。
『あぁ〜そういえばそうだったな』
「少しだけ違います」
思ってもみなかった黒子のその言葉に、天は困惑で「え?」と溢した。
「楽しむ…とはちょっと違うと思いますが、
面白い人を見つけたんです」
『“おもしろいひと”?』
意味ありげに話す黒子に対して、天はさらに問いただす。
『誰だ?バスケ部のやつか?』
「はい。」
そう答えた黒子の横顔は、心なしか嬉しそうに天の目には映った。
そして黒子は、遥か遠くを眺めるような眼差しで続けた。
「凄く、輝いてくれそうな人でした」
『は?』
黒子は多くを語らない代わりに、その口から紡ぎ出される言葉一つ一つが、重みを持っているように天は思えた。
そして、黒子が最後に残した一言…
それは他の言葉と比べ物にならないほどの重み…
強いては、黒子の思いがこもっていると言うことは、天でも容易く理解できた。
「ボクは影です」