第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
黒子は今日の昼休み、天をバスケ部の先輩に引き合わせようとしていた、ということを打ち明けた。
しかし、天には懸念があった。
『でも…私バスケ部には』
「分かってます」
天のそんな心情を汲み取ったかのように、黒子は不安をかき消すべく口を開いた。
「無理に勧誘しよう、とか
元々そういうのではないので、
安心してください」
それを聞いた天は、一瞬戸惑った。
「藤堂さんが思ってる通り
ボクは確かに先輩たちから頼まれました。
「藤堂さんと会わせて欲しい」と」
『そうか…』
「最初は協力するか迷ったんです」
『え?』
「断ることも考えてました」
いつもより言葉数の多い黒子の声は。
雨に洗い流され、澱みを忘れた冷たい空気のように澄んでいて、天の心にスッと入り込んできた。
「でも、話を聞いているうちに
ただ面白半分で言ってるわけじゃない
って気づいたんです」
黒子はそう言うと、それまで正面に向けていた顔を天の方へ向けた。
「先輩方もカントクも、
みんな藤堂さんに会いたがっています」
そして、天の瞳を真っ直ぐと見つめて、こう続けた。
「ただ、それだけなんです…」
その瞬間、天は確信した。
その眼差しで、黒子の言葉に嘘は一つもないということを。
「それから」