第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
黒子は真実を知っていた。
「藤堂さんもボクと同じ、
バスケ選手だったということを」
だとしたらいつから?
何を、どの程度知っている?
知っている上で、自分に近づいたのだろうか。
そうなんだとしたら、一体どんな理由で…
色々と思考を張り巡らせた結果、天は黒子のことを“自分にとって害となりえる存在”と認識した。
そして、黒子から遠ざかるように再び歩を進める。
「待ってください」
渡り廊下から教室棟へ戻ろうと、階段を上がり始めた天を黒子が呼び止める。
・・
「その…そう聞いたんです」
その言葉で、天の脚は止まった。
「部活の先輩に。昨日…」
それはつまり、黒子は一昨日以前…少なくとも入学前から天のことを知っていたわけではない、ということを簡潔に表していた。
そうなると、話は大きく変わってくる。
天の歩行が止まったことを確認した黒子は、少しの安堵共に続けた。
「ボクは藤堂さんの過去を知らなかったし、
今こうして話しているのも
藤堂さんがボクのクラスメイトだからです」
この時、天は考えていた。
「バスケ部の先輩から聞いた」と言っていた黒子は、自分のことをどんな言葉で教えられたのだろう、と。
誠凛高校で学生生活を送るにあたって、これほど早く素性が知れてしまったことは、天にとって誤算だった。
また、それがよりによって黒子にまで伝わってしまったことも。
中学時代の…プレイヤーだった頃の天を知った黒子は、まず初めに何を思っただろう。
プレイしていたことを隠していたと知ったら、幻滅しただろうか。
天が黒子の存在を知ったのは、中学時代に挑んだ全中において、同時並行で行われていた男バスの試合がきっかけだった。
しかし黒子の中で、天と出会ったのはあくまでも昨日の朝だ。
2人はただ、同じ学校に入学した、同い年の生徒になるはずだった。