第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜渡り廊下〜
そんなこと、言うつもりなんてなかった。
知らん顔を続けることだって出来たはずだ。
気を遣わず、興味を持たず、関わりもせず。
黒子を見ようともせずに。
それなのに天の声はちゃんと、雨の音に掻き消されないよう、自然と大きくなっていた。
ついには、自分が何をしたかったのかさえ、思い出せなくなった時。
『てか、ほんと止まねぇーじゃん』
天は自ら、天気の話題へと話を戻した。
黒子の方へ向けていた視線は、空模様を嘆くのと同時に黒い雲へと吸い込まれていった。
『こんなん律儀に待ってられねぇーよな?
これで止まなかったら待ち損だし…』
「黒子には部活もあるし、自ら切り上げるのが道理だ」と思った天は、終止符を打ちにはいった。
黒子がちゃんと納得するよう、「学校で傘の貸し出しとかやってねぇーのかな?」とデカい独り言まで呟いて。
黒子に背を向けて、天は足早に教室棟へ歩き始める。
その背中を、「すみません藤堂さん」という声が引き留めた。
「ボク、藤堂さんに黙っていたことがあるんです」
その言葉で、天の足はピタリと止まった。