第11章 バスケットボールと花時雨
●天 side● 〜1-B教室〜
天は、差し出された黒子の手に視線を落とした。
そこには、黒子のものと思われる折り畳み傘があった。
天はそれを見て、すぐに気付いた。
困ったように雨を眺めていた自分のことを、黒子が心配してくれたことを。
それだけでは飽き足らず、自分の傘を天に貸そうとしてくれたことを。
『そんな…』
しかし、それは天自身が許さなかった。
いくらなんでも黒子に気を遣わせすぎだと、差し出された折り畳み傘を「受け取れねぇーよ」と手のひらで優しく突き返した。
『それはさすがに申し訳ない…』
「そう言われると思いました」
そう言って黒子は、困ったように少し笑った。
それを見た天は、どうにも居たたまれなくなってしまった。
『ごめん…』
「いいんですよ」
そう言うと黒子は、折り畳み傘を鞄の中にしまった。
「どうされますか?止むまで」
『さぁ?どうしよう…』
黒子にそう聞かれた天は、再び窓の外へと視線を向けた。
相変わらず雨は降り注ぎ、雲は薄くなる兆しさえ見せない。
『まぁ、待つしかないんだけど』
「そうですか」
黒子と当たり障りのない会話をしながら、再び校庭へと視線を向けた時…
その先の光景を見た天の頭に、一つアイデアが浮かんだ。
『桜…』