第10章 チャイムの鳴る前に
●リコ side● 〜図書室前〜
「先輩…何されてるんですか」
「すまん…ちょっと想定外のことが」
伊月は本来の意図を忘れてしまっているのか、依然小金井を羽交締めしたまま、黒子に対して平謝りした。
小金井はそんな状況から脱しようと、自分の身体を締め上げる伊月の腕をタシタシと叩いている。
「コソコソなんかやってると思えば…
黒子もグルだったのか」
「キャプテンこそ急に出てきて…
ビックリさせないでくださいよ」
「いや知るか!!」
リコは黒子に、黒子がいない間に起こったことを説明した。
知らぬ間に日向、小金井、水戸部の3人に見つかり、唐突に介入されたことで、どうにも対処出来なくなったことを。
「あぁ~!せっかくここまで漕ぎ着けたのに~!
水戸部くんの馬鹿ぁ~!!」
そして、イライラの鬱憤を晴らすかのように、水戸部の身体をポカポカと叩いた。
その間、水戸部は申し訳なさそうな、困ったような面持ちでオロオロとしていた。
藤堂 天がいなくなったことで、緊張の糸は取れた。
その拍子にさまざまな感情が入り乱れ、その場は一気にカオスと化した。
ところが日向の一言で、再び緊張が張り詰めることとなる。
「さっきのあの女子…“とうどう”つったっけ?」