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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第10章 チャイムの鳴る前に


●リコ side● 〜図書室前〜


「キャプテン」

「うわっ?!!」


結局、日向を止めることは出来なかった。


リコと伊月は「やってしまった…」と後悔しながら、鉢合わせてしまった日向と黒子の会話を、ただ聞いているしかなかった。


「え…っと、お前は確か…
 黒子…だっけ?」

「そうです。それにしても、」

「「 どうして お前/キャプテン が? 」」


こんなこと、想定していなかった。
もう修正は効かない。
こうなってしまったら、これから先どういう展開になるのか読めない。


『黒子くん。私に会わせたい人って
 この人のこと?』

「いえ、少し違うんですが」


声だけしか聞こえないが、藤堂 天も少々戸惑っている様子だった。
失敗したのは自分たちだが、黒子が代わりにどうにかしてくれることをひたすら願った。


しかし、半ば諦めている自分がいた。
バスケ部のキャプテンである日向に知られてしまったのだ。
昨日あれほど噂になった藤堂 天を前にしたら、どうなるかくらい分かりきっていた。


どうにも出来ないまま、「もう色々と終わった…」と肩を落とした。


ところが…


「黒子のダチか?」


日向はただ一言、それだけしか言わなかった。


リコと伊月は「え?」と目を点にした。


日向の声色からは、驚きも動揺も感じられない。
藤堂 天を前にしているのに、だ。


この時になって、2人はようやく思い出した。


そして「そっか、日向くんって」「ポテチちゃんの顔知らないんだった!」と目配せで確認しあった。


あまりに急な出来事だったため忘れていたが、昨日校庭で藤堂 天…ポテチちゃんと鉢合わせたのは、小金井、伊月、そして水戸部の3人だけだった。
日向はポテチちゃんと会っていない。
つまり、藤堂 天がどんな容姿をしているのか、知りようがないということだ。


それを思い出した途端、リコと伊月は「はぁ〜…」と安堵のため息を溢し、胸を撫で下ろした。


その代わりに、小金井は少し引っ掛かっていたようだった。
藤堂 天の声に「あれ?この声…」と反応したが、すぐ伊月に「シィー黙ってろ…!」と止められていた。


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