第10章 チャイムの鳴る前に
●リコ/伊月 side● 〜1-B教室〜
一方、1-Bの教室の外では、
「なぁ、カントク」
リコと伊月が、教室内に1人入っていった黒子の帰りを待っていた。
そして、焦る気持ちをどうにか紛らわそうとして、伊月がリコに声をかけた。
「ポテ…じゃなくて、“藤堂 天”って。
実際はどんな選手だったんだろうな?」
伊月にそう尋ねられ、リコの表情は固くなる。
一文字に結ぶその口からは、真剣さが伺える「う~ん」という唸り声が漏れていた。
軽いお喋りのつもりだった伊月は、その姿を見て質問したことを少し後悔した。
・・・・・・・
「今じゃなかったか」と思いなおし、伊月は撤回しようとした…が。
「ちょっと妙なのよね…」
「妙?」
リコは伊月よりも先に、固く閉じていた口を開いた。
「…って何が」
伊月は口数も少なく、リコの次の言葉を待った。