第10章 チャイムの鳴る前に
●リコ/伊月 side● 〜1-B教室〜
リコは昨夜帰宅後、“藤堂 天”に関する記載があると思われる期間の雑誌、現地新聞、ネット記事…
その他諸々を探し出し、情報を集めたことを伊月に対して打ち明けた。
「伊月君、“藤堂 天”が月バスに載ってた、
って言ってたでしょ?」
「あぁ」
「それらしい月バスも見つけた」
この時伊月は、あらためてリコの行動力、実行力の高さ。
監督としての責任感の強さを再確認した。
「私も同じものを見たわ。“藤堂 天”の姿もね」
「それで…成果は?」
伊月は期待に満ちた眼差しでリコを見つめた。
しかし、
「おそらく伊月君が知ってることと同じよ?」
リコは溜息交じりにそう答えた。
「てことは」
「“藤堂 天”の出身校の情報から分かった
全中の勝敗の結果くらいね」
「それじゃ…知ってたのか。
“藤堂 天”の中学が、去年の全中の」
「決勝戦で負けてるってこと。
もちろん知ってた」
流石にその程度ならすぐに分かるか、と納得する伊月。
そしてその横で「けど、それ以外は全くダメね…」と、音を上げながら落胆するリコ。
・・
「それなりに有力そうなものは、何も掴めなかった」
伊月からの羨望の眼差しを断ち切るように、リコは目を逸らしながら言った。
地面に落ちたリコの視線に続くように、伊月は肩を落とした。
ところが…
「でもね」と始まったリコの次の一言で、伊月は再び視線を上げることになる。