第10章 チャイムの鳴る前に
●天 side● 〜???〜
ー同時刻ー
『すみません』
先輩・クラスメイトが探す最中、1-Bから姿を消した天はある場所にいた。
『両手塞がってるんで
開けてもらっても良いっすか?』
?「え?あぁ…もちろん」
近場にいた上級生に、「扉を開けてほしい」と要求する天の両手は確かに忙しそうで、どこから持ってきたのか冊子の山を抱えていた。
ガラガラガラッと音を立てて開かれた扉の先では、陽の光が差し込む廊下が続いている。
天は眩しさに若干目を細めて、「ありがとうございます」と言いながら出口をくぐる。
?「ねぇ…キミ、そんなに持って大丈夫?」
『え?』
廊下に踏み出した天に、上級生は心配そうに声をかけた。
その声に釣られて天が振り返ると、やはり両手を塞ぐほどの山積みの本が上級生の目に映った。
高く積み重なったその様子からは、相当な重量であることが想像に容易い。
上級生は「とても一人で持ち運べる量ではない」と思い、声をかけたのだった。
ところが、
『大丈夫ですよ?』
当の本人は、意にも返さぬ様子でサラッと答えてみせた。
天はそのまま「扉、ども、じゃあこれで」と、細々口にしながら軽く会釈した。
そんな天の様子に、上級生は腑に落ちないながらも、「いや…まぁ気をつけてね?」と注意だけして、扉を再び閉めた。
『っし、教室戻っか…』
そう口にしながら、天は廊下を歩き始めた。
天が後にした部屋の扉には、「図書室」と言う文字が掲げられていた。