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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第4章 この道、桜吹雪につき。注意。


●藤堂 天● 〜学校〜


?「ねぇ、そこのあなた!ちょっといい?!」

『うおぉ!!』


ただ歩いていただけなのに、目の前に突然人影が飛び出してきた。
イヤホンをしていても聞こえてきた声に、驚いて思わず重心を後ろへ引き戻した。


なるほど。
東京ではこういうことがあるから、人の波には気をつけろって言われるんだな?


前進していた私の身体は、人影にぶつかるルートを回避して無事衝突を免れた。
けど、本体はどうにか操れても、そう上手くいかない物もある…


しっかりと持っていたはずのポテチの袋が、咄嗟の動きについて来れず、後退と共に掌から離れた。


『っ!?』


手を離れて宙に浮いたポテチの袋が、私からはしっかりと見えた。


ま、まずい!
このままじゃ落ちる!


ポテチが!
私の大容量が!!


私の周りの時間が、刻を進めるスピードを一瞬だけ緩やかにしたように感じた。


私から離れ、重力のままに落ちていく袋を。
目が。手が。
必死に追いかける。


が…


「どう考えても間に合わねぇ!!」。
そう思って、私の中に諦めが芽生えた。


次に私の目に飛び飛んでくるのは、私の腹に収まるはずだったポテチが、目の前で地面に散らばる最悪な光景だろう。
そして周囲の人たちは、地面に散らばったポテチを見つめて、悲惨な表情を浮かべる新一年生の顔を見ることになる。


コンマ一秒の間に、思考が廻る。


脊髄反射は、“最悪の瞬間”が訪れないよう必死に追いかける。
一方で頭の方は、“その時”が来るのを覚悟した。


どっちだ?


どっちだ?


私が目にするのは。
どちらの結末だ?



 ピタッ…



『え。』


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