• テキストサイズ

宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●天 side● 〜自宅〜


ポテトチップスを食べる傍ら、明日の学校の準備も着々とこなしていく。
いま机の上には、必要なものが全て入っている鞄と、明日の朝の着替えが並んでいる。


完璧なまでのその徹底ぶりに、天は一日の終わりにちょっとした充実感と達成感に包まれた。


ポテトチップスを食べ終えれば、後はもう一度歯を磨いて寝るだけ。


…というタイミングで、今日一日でやり残したことがないかを振り返った。


と言うのも天は、


『そういやなんか忘れてる気がすんだよな〜』


帰宅してから今の今まで、ずーっと腑に落ちないでいたのだ。
自分が、忘れてはいけない何かを、忘れてしまっているような気がした。


思い出せないということは、そこまで重要なことではないのかもしれない。
しかし、どうにも収まりが悪い。


『今日一日』というパズルが、失ったたった1つのピースを求めて、苦しんでいるかのようであった。


「ほんと、何だろう…」と口にして、天はポテトチップスを摘んでしょっぱくなった指先を舐める。


その時だった…


『あ。』


自分の指を舐め上げた瞬間、天は「はっ!」と思い出した。
あたかもその行動が、トリガーだったかのように。


刹那に抱いた、その“違和感”。
今朝、今と全く同じ衝動に駆られたことを思い出した。


舐め上げた親指を見つめて、天はやっと気がついた。


失ったと思った、たった1つのピースのことを…


“爪切り”。


『買うの忘れた…』


/ 358ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp