第9章 restart and redo.
●no side● 〜???〜
“上手くいかなかった時”。
“しくじった時”。
“思い通りにならなかった時”、真っ先に何を考える?
恐らく過去の自分の行動や選択を思い出し、そして恨むはずだ。
「ああしていれば良かった」、「こうしていれば良かった」と。
今の自分がいるのは、過去の自分の判断ミスである事を悔やむのだ。
だが、本当にそれが全てだろうか?
世間と言うものは、それほど単純には出来ていない。
個人のたった一つの選択の違いや、行動の幅だけで、成立する結果などありはしないのだ。
周囲の環境、関わった人間、そしてタイミング…
そういった個人を取り巻く全ての要素が、結果を何十にも何百にも変えてしまうのだ。
自身の身の回りで起こってしまったこと全てを、選択し続けることなど。
人間には不可能だ。
しかし…
・・
もし天に、日頃からテレビを見る習慣があったのならば。
明日の天気予報を難なく知れただろう。
・・
もし何らかの手段により、天が明日の天気を把握できていたのだとしたら。
明日の荷物を確認している際、傘の準備を怠ることもなかっただろう。
これは全て、“if(もし)”の話だ。
だから、“最後に待っている結果”を“確実”と断言するにはあまりにも不確かだ。
天を取り巻く様々な要素が、結果をいとも容易く変えてしまうかもしれない。
だが少なくとも…
ただ一つ。
今は、たった一つだけ。
“爪切りを買う”と言う、単純で簡単な買い物すら忘れてしまった天が。
“明日の天気を知ろうとする行動”を、選択していたのだとしたら。
今は、その行動一つだけで。
明日の自分自身を、放課後の学校に足止めさせる理由を…
作らずに、済んだはずだった。