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宵闇の明けと想ふは君だけと〈I•H編〉

第9章 restart and redo.


●天 side● 〜自宅〜


天は水で満たしたコップに口を付けると、少量を口に含みグチュグチュと口をゆすいだ。
それをペッ!と吐き出すと、コップに残った水を一気に喉に流し込んだ。


都会の水道から出る水は、天にとって決して喜ばしいものではなかった。
「なんか美味しくない」と、とても曖昧な話ではあるのだが、どうも満足していないらしい。


しかし、背に腹は代えられない。
今の状況では贅沢も言っていられず、「不味ぃーな…」と悪態をつきながらも天は東京の水で口を清めた。


空のコップをシンクに置き、踵を返して部屋へと向き直る。


ふと、その場で立ち止まり、部屋を見回した。
その先で、天が見たものは…


女子高生一人暮らしにしては、広いリビング。


しっかりとしたキッチンに、デカすぎる冷蔵庫。
多機能すぎる電子レンジ。


更には、時短アイテムなど。
奥にある脱衣所には、乾燥機付きドラム式洗濯機まである。


それらを見た天は、「勿体無い」とすら思った。
本来、自分の生活を支えるものであるそれらに対して、「自分は不相応」だと天自身を卑下した。


訳ありの一人暮らしを始めたものの、家事と言うものを少しも理解せず。
それまで蔑ろにしてきた代償を取られるように、何から手を付ければ良いのかすら分からない。


不器用で、正確に賢く扱うこともろくに出来ない。
それなのに、道具ばかりが揃ったところで、何の意味もないと痛感したのだ。


『風呂入ろ…』


やるべき事も出来る事も見失い、そう言いながらキッチンを離れ浴槽へと向かう天。


しかし…


シャワーを浴びるよりも、湯船に浸かるよりも。
まず先に、“歯を磨く”という名目で、口の中をリセットした。


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