第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館裏〜
「うん…もう何でもいいや。
とにかく!全員早く帰るんだよ?」
黒子に不意を突かれたためか。
それとも、生徒を相手しているのが面倒くさくなったのか。
警備員はたいして怒りもせずに、生徒3人に対し帰宅を促した。
リコが「はい、お手数おかけしました」と頭を下げる横で、伊月は警備員が来た道を引き返すように走り始めていた。
「俺、ダッシュで更衣室から
荷物取ってくるんで!
閉めんのちょっと待っててください!」
一度振り返ってそう言い残すと、伊月は再び走り出していた。
そしてそれを見たリコが「あ!待って私も!!」と、釣られて走り出す。
警備員はそんな2人を「はいよ」と言って見送った。
ライトの明るさに慣れてしまった伊月の目は、体育館裏の暗さを忘れ、おぼつかない足取りになっていた。
現に見えない何かに足を取られ、転びかけて「うわぁ?!」と叫んでいた。
前方で転びかけた伊月を目の当たりにしたリコは、「ちょっと!危ないでしょ足元気をつけなさいよ!」と言いつつも、実は自分もよく見えていなかったりする。
リコと伊月が体育館内へと戻ったことで、体育館裏は静けさを取り戻していた。
「自分も帰らなければ」と思いながらも、光のほとんどない暗闇の中、唯一明かりを放っている場所に黒子は近づいた。
「すみません」と言う黒子の問いかけに対して、警備員はあくまでも普通に「ん?」と返答した。
黒子に声をかけられても驚いた様子はないことから、警備員は疾うに黒子を認識していたのだろう。
黒子には、帰路に着く前にやっておきたいことがあったのだ。
先輩2人に連れ出されるまでは、何のことなく実行できると思っていたのだが、今は部活終了直後とは少しばかり状況が違っていた。
「その“やけにガタイのいい部員”…」
それは強いて言うなら…“けじめ”のようなものであった。
これからの自分の在り方を、決意するためとでも言うだろうか?
黒子は、どうしても会わなければならなかった。
「どっちに行ったか、分かりますか?」
火神 大我に。