第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館裏〜
思わず受け取ってしまったが、そもそもリコの鞄は女子更衣室においてあるはずだ。
だから、部外者はおろかバスケ部の誰も、その収納場所は知らない。
そのことに気付いたリコの口から「あれ?」と言葉が零れていた。
「ところで、君たち2人だけ?」
「「 え? 」」
リコの戸惑う様子にも気付かず、警備員は目の前にいる2年生2人に問いかけた。
思わず2人は、顔を上げて視線を送る。
「さっきのガタイいいのが、3人残ってるって
言ってたような気がするんだけど」
警備員のその様子から、「どうやら黒子に気付いていない」ということが、リコと伊月には分かった。
しかし実際は、黒子は自分たち2人のすぐ傍にいる。
それは、警備員にとっても同じことだった。
「あの」
そう黒子が声をかけると、警備員は不意を突かれたように「え」と声を漏らした。
「います。3人」
黒子が立て続けに声をかけると、さすがに警備員も気が付いたのか、その姿を視界に収め「うおぉ?!!」と驚いていた。
黒子を前にして後退り、草を踏みしめるガサガサッ!という音が周囲に響く。
しばらくの間、体育館の壁面をあてもなく照らしていたライトの明かりだったが、対象を定めて一点に明かりを送ると…
そこには確かに、黒子の姿があった。
「ありがとうございます。
それボクのです」
黒子は警備員にそう言う傍ら、リコから鞄を受け取った。