第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館裏〜
「体育館の最終確認に来たら、
やけにガタイのいい部員が
荷物取りに入って来てな。」
リコと伊月と黒子の前で、中年のやや豊満な男性が仁王立ちで話し始めた。
この男性は、疑うこともなく誠凛高校の警備員であり、今まさに校内に残っている生徒がいないか最終確認に巡回していたところだった。
3人は警備員の口にした“やけにガタイのいい部員”というのが、火神のことであるとすぐに気が付いた。
「驚いたのなんのって…」と、警備員が首を左右にユラユラと振ると、ライトの明かりも同じようにユラユラと揺れた。
その片手には結構な大きさのライトが握られており、この大きさであれば広範囲を照らすのには苦労しないであろう。
今もリコたちの周囲を明るく照らし、草の隙間おも見通せそうであった。
「「裏にも部員が残ってる」って
言うもんだから来てみたら…」
警備員によると、最終確認をしていた体育館に火神が入って来たことにより、リコたちの存在も知ることになったという。
下校時刻が迫っているどころか、余裕で越えてしまっていたとは、さすがのリコも想像していなかった。
話し込んでいたため、3人のうち誰も体育館から漏れ出していた光が、疾うに無くなっていることに気が付かなかった。
「体育館、もう閉めるよ?
ほ~ら荷物持って」
警備員はそう言いながら、ライトを握ってない方の手に持っていた通学鞄を、リコの方へズイッっと差し出した。
リコはそれを「あぁ、すみません…」と口にしながら受け取った。
ところが、警備員から受け取ったその通学鞄は、リコのものではなかった。