第9章 restart and redo.
●no side● 〜体育館裏〜
こうしてリコと伊月は、黒子に藤堂 天との接触を容認してもらうに至った。
2人は藤堂 天に会うにあたり、黒子と1つ約束を交わすこととなった。
それは、「無理な勧誘はしない」ということだった。
「勧誘は一切しない」となっても良いところではあるが、そうならなかったのはリコが黒子に懇願したためだ。
過去の黒子の失敗と、「勧誘の方はたぶんダメだと思います…が。それでも、いいですか?」という前置きは有難く頂戴しつつ。
一縷の希望があると信じて、「正式に藤堂 天を勧誘をする機会を、一度だけは許して欲しい」と。
黒子がそれを了承したのは、「純粋に藤堂 天と話がしたい」という自身と類似した思いを、先輩2人から感じ取ったためであろう。
「分かりました。それでは…」
抱く思いは、それぞれ違って当然だ。
しかし、目的とする少女は同じである。
一人では決して辿り着けなかったところに立っている。
だからこそ、せめて今だけは、協力するということ以外に残されてはいない。
確かめるようにそう考えてから、黒子は決意した勢いに任せるように口にした。
「明日の昼休み、藤堂さんに会いに行きましょう」
黒子のその言葉を合図にするかのように、リコと伊月が深く頷いた。
それはまるで「自分たちは引かないし、黒子にも引かせはしない」という意思を、黒子に示しているようであった。
今の取り決めを無効にすることは決して無い、と念押しするかのように。
リコと伊月が始めた“藤堂 天探し”がついに、大詰めを迎えようとしている。
ところが…
一区切りするように「今日はここでお終い」とはならなかった。
リコと伊月、そして黒子の長く続いた対話が終わりに差し掛かったその時。
白く眩しい強い光が、3人のことを明るく照らしたのであった。